Q12:入社した乗務員がすぐに辞めると、社保の手続きをしたことに虚しさを覚えます。最初の雇用契約期間を2か月として、その後更新するなら、最初の2か月間は社会保険に加入させなくてもいいでしょうか?
A11:そもそも旅客自動車運送事業運輸規則第36条では、旅客自動車運送事業者は「二月以内の期間を定めて使用される者」を事業用自動車の運転者として選任してはならない、と定めています。よって、2か月以内の雇用契約として社会保険の適用対象外とすることはできません。
「乗務員を採用して社保の加入手続をしても、すぐに辞めちゃったら手続きが無駄になる」
という話(グチ)をよく聞きますが、話が進むうちに
「せめて試用期間中は加入させなくてもいい?」
とか、少し詳しい方だと
「雇用契約期間2か月までなら社保加入させなくてもいいんだよね?」
という流れになったりします。(むしろ何とか社会保険料負担を減らせないものか、という展開に・・・汗。)
社会保険被保険者の要件について改めて見てみましょう。
- 会社(適用事業所)に常時使用される人は社会保険の被保険者となる。
- パートやアルバイト等でも、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である人は、被保険者となる。
- また、正社員の4分の3未満であっても、①週の所定労働時間が20時間以上、②雇用期間が1年以上見込まれること、③月額賃金が8.8万円以上、④学生以外、⑤被保険者(短時間労働者を除く)数が常時501人以上の企業に勤務していること、の5つの要件を全て満たす人は、被保険者となる。(令和4年10月には②が2か月超&⑤が101人に変更、令和6年10月には⑤が51人以上に変更となります)
一方、「社会保険被保険者とされない人」は、次のとおりです。
被保険者とされない人 | 被保険者となる場合 |
日々雇い入れられる人 | 1か月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となる。 |
2か月以内の期間を定めて使用される人 | 所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となる。 |
所在地が一定しない事業所に使用される人 | いかなる場合も被保険者とならない。 |
季節的業務(4か月以内)に使用される人 | 継続して4か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。 |
臨時的事業の事業所(6カ月以内)に使用される人 | 継続して6カ月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。 |
この「2か月以内の期間を定めて使用される人」が社会保険被保険者とされないことから、冒頭のご質問が来ているわけです。なお、「試用期間」と言うのは上記に該当しませんので、当初から社会保険加入となります。
では、乗務員に対して、まず契約期間2か月の雇用契約を結び、その後、更新あるいは雇止めという契約にしておけば、最初の2か月に関しては社会保険の加入手続きをしないことは可能なのか?
答えは明白で、そもそもタクシー乗務員に対して、2か月以内の雇用契約を結ぶことはできません。
なぜなら、旅客自動車運送事業運輸規則第36条では、旅客自動車運送事業者は「二月以内の期間を定めて使用される者」や「日日雇い入れられる者」など一定の者を事業用自動車の運転者として選任してはならない、と定めているからです。
2か月以内の雇用契約はNGなので、当然、社会保険の適用対象外とすることもできません。
雇用契約を結んだら、当初から社会保険に加入させることになります。
余談ですが、2か月以内の雇用契約であっても、実態からみて、2か月を超えて使用される見込みがあると判断できる場合(雇用契約上、契約更新があることが明示されている場合や、同じような契約で更新により2か月を超えて雇用された実績がある場合、など)にも、最初の2か月の雇用期間を含めて、当初から社会保険加入の対象とすることが今後予定されています。
なお、勤務時間や勤務日数が正社員の4分の3未満の定時制乗務員で、かつ上記の社会保険の加入要件に該当しないのであれば、社会保険の適用対象外となりえます。
ただし、前述のとおり、今後社会保険の適用拡大が行われますので、注意は必要です。
〇旅客自動車運送事業運輸規則
第36条 旅客自動車運送事業者(個人タクシー事業者を除く。)は、次の各号の一に該当する者を前条の運転者その他事業用自動車の運転者として選任してはならない。
一 日日雇い入れられる者
二 二月以内の期間を定めて使用される者
三 試みの使用期間中の者(14日を超えて引き続き使用されるに至つた者を除く。)
四 14日未満の期間ごとに賃金の支払い(仮払い、前貸しその他の方法による金銭の授受であつて実質的に賃金の支払いと認められる行為を含む。)を受ける者