Q2:タクシー会社の隔日勤務で、所定労働時間が14時間とか16時間という勤務がありますが、労働基準法に違反しないんですか?

A1:労働基準法に基づく「変形労働時間制」で運用されているのであれば、法違反ではありません。

解説

労働基準法32条で、法定労働時間は1日8時間、1週40時間と定められています。
法定労働時間とは、「この時間を超えて働かせてはならない」というものですが、実務上、言い換えれば、この時間を超える所定労働時間を定めてはならない、ということです。

ただし、これには例外があります。
労働基準法32条の2の「1か月単位の変形労働時間制」や、32条の4の「1年単位の変形労働時間制」などを採用していれば、1日8時間や1週40時間を超える所定労働時間を定めることができます。
変形労働時間制の考え方は、以下の通りです。

1か月以内や、1年以内といった一定期間を、平均して週40時間を超えないようにあらかじめ所定労働時間や所定労働日を定めておくのであれば、日や週によっては、1日8時間、1週40時間を超えてもOK。

平均して週40時間を超えないように、というのが少しわかりにくいですが、タクシー会社は、「1か月単位の変形労働時間制」を採用している会社がほとんどですので、実例を挙げてみます。

例えば、1か月(30日)の月に、1乗務の所定労働時間14時間で、12乗務の勤務シフトを組む。
1か月の労働時間 14時間×12乗務=168時間
これを週あたりに換算すると、
168時間×7日/30日=39.2時間<40時間

つまり、1日の所定労働時間は長いけれど、平均したら週40時間におさまるのでOK
これが、変形労働時間制の基本的な考え方です。

実務上は、いちいち週に換算するのが面倒なので、週40時間以内になる「上限時間」で考えます。

28日の月 40時間×28日/7日=160時間
30日の月 40時間×30日/7日≒171.4時間
31日の月 40時間×31日/7日≒177.1時間
あるいは
10日サイクルなら 40時間×10日/7日≒57.1時間
15日サイクルなら 40時間×15日/7日≒85.7時間

これらの上限時間におさまるように勤務を組めば、平均した時に週40時間以内におさまります

なお、タクシー乗務員については、別途、改善基準告示で、1日の拘束時間の上限が決められており、所定労働時間と休憩時間、残業時間をあわせて、原則として隔日勤務の場合21時間日勤勤務の場合13時間(最大16時間)以内であることに留意する必要があります。

また、この変形労働時間制を実際に運用するに当たっては、次のような定めがあります。

「1か月単位の変形労働時間制」の要件
(1)必要な手続き
 就業規則への記載、または労使協定の締結と労働基準監督署への届出
(2)就業規則または労使協定で定める内容
 ①対象労働者の範囲 ②労働日及び労働日ごとの労働時間 ③変形期間及び起算日 ④協定の有効期間(労使協定による場合のみ)

タクシー会社のほとんどが就業規則を作成しているので、わざわざ届出が必要な労使協定によらず、就業規則への記載で行うケースが多いでしょう。
この場合、1か月単位の変形労働時間制を採用する旨と、①から③について記載されている必要があります。
ただし、②については、「就業規則でできるだけ具体的に特定すべき」としつつ、月ごとに勤務交番表などを作成するような場合については、

「業務の実態から月ごとに勤務割を作成する必要がある場合には、就業規則において各直勤務の始業終業時刻、各直勤務の組合せの考え方、勤務割表の作成手続およびその周知方法を定めておき、それにしたがって各日ごとの勤務割は、変形期間の開始前までに具体的に特定することで足りる」(昭和63.3.14基発150号)

と、行政通達で示されています。

以上、隔日勤務などで、なぜ長時間の所定労働時間が許されるかを解説しました。
注意すべきは、タクシー会社だから自動的に変形労働時間制が適用されるというわけではなく、就業規則への記載など、労働基準法上の要件はキチンと満たしておかなければならない(そうでなければ、労働基準法違反になる)ということです。