Q10:未収運賃や貸付金の返済金などを賃金から控除していいですか?
A10:社会保険料や税金以外のものを賃金から控除するには、あらかじめ賃金控除に関する労使協定を締結しておかなければ労働基準法違反となります。
労働基準法24条では以下のように規定しています。
「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、(中略)、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。」
つまり、賃金は、本来(あれこれ引いたりせず)全額払わなければならず、控除できるのは法令に別段の定めがある場合(具体的には、税金と社会保険料です)と、労使の書面協定がある場合に限られるということです。
言い換えれば、税金と社会保険料以外のものを労使の書面協定によらず控除するのは労働基準法24条違反、となります。
※ただし、給与計算上の欠勤控除や、(就業規則に基づく)懲戒処分としての減給の制裁は書面協定によらなくてもOKです。
では、労使の書面協定があれば、何でも控除してOKかと言えばそうではなく、あくまで「事理明白なもの」とされています。購買代金や社宅費、社内預金、組合費などが代表的なものとして挙げられます。
タクシー会社でよくあるのは、貸付金の返済金や、未収運賃、互助会費などでしょうか。
用途不明、意味不明、単に労働者から搾取するようなものはNGです。以前、違法派遣などで社会問題となった会社で、「データ整備費」というよくわからないものが毎月給与から天引きされていたとして問題になりました。
協定書の様式は任意ですが、少なくとも(1)控除の対象となる具体的な項目、(2)各項目別に定める控除を行う賃金支払日を記載することとされています。
賃金控除に関する協定書(例)
株式会社○○○○ と 従業員代表 ○○○○ は労働基準法第24条第1項ただし書に基づき、賃金控除に関して下記のとおり協定する。
記
1.会社は、毎月○日の賃金支払いの際、次に掲げるものを控除して支払うことができる。
(1) ○○○○
(2) ・・・・
2.この協定は 令和○年○月○日から有効とする。
3.この協定は、何れかの当事者が○日前に文書による破棄の通告をしない限り効力を有するものとする。
令和○年○月○日
株式会社○○○○ 代表取締役 ○○○○ 印
株式会社○○○○ 従業員代表 ○○○○ 印
もし、協定無しに控除している項目あれば、早急に協定を締結しましょう。