有休を付与するとは?
乗務員が有給休暇を取得した日については、賃金を支払わなければなりません。
「うち、オール歩合で休んだ日もペナルティ(欠勤控除)ないから、これって有休を与えてることになるよね」(社長)
実はよく耳にする話ですが、ソレ、間違ってます。
オール歩合で欠勤控除をしないのは当たり前ですが、年休を取得した日については、更にその分の賃金を支給しなければなりません。
「!」(社長)
大抵、こんな反応をされます。
次に、こんなことを言われたりします。
「でも、内勤が有休とったときは、欠勤控除しないことで有休を与えているけど、これと同じ理屈じゃないの??」(社長)
果たして同じ理屈かどうか、ここで解説しましょう。
固定給の有休付与の考え方
月給制で働く人の多くは、固定給で支払われることが多いかと思います。タクシー会社の内勤(正社員)の方も、一般的にはそうでしょう。
この固定給(一般には「基本給」)は、1ヶ月間に所定の勤務日数・時間を働くことを前提に、その額が決められます。
もちろん、残業をしたらその分の割増賃金は別に支払われます 。
ですから、欠勤してしまったら、その分の固定給はカット(欠勤)されても仕方ない、ということになります。
*いわゆる「ノーワーク・ノーペイの原則」というやつです。
しかし、長く働いているとプライベートな用事や病気・怪我で会社を休むことも出てくるでしょう。その都度、賃金をカットされるとなると、おちおち休むことができません。
そこで労働基準法では、一定要件で、会社を休んでも賃金が支払われるという「年次有給休暇」を労働者の権利として認めています。(発生要件などはここを参照)
(現実にはあまりないですが)固定給で働く乗務員が有休を取得したケースを図示します。
「ほぼ差引ゼロ」と書いたのは、有休付与で支払う賃金はいくつか種類があるからです(次ページで解説します。)
もちろん、欠勤控除して、同じ額を有休の賃金として付与する、結果として「単に欠勤控除しないこと」も、有休を与えたことになります。給与計算が簡単なので、固定給制の場合は広く使われている方法です。
実際、行政通達でも「通常の出勤をしたものとして取り扱えば足り・・・」(昭27.9.20 基発第675号)とされています。
歩合給の有休付与の考え方
それでは、オール歩合給の場合はどうでしょうか?
「タクシー労務Q&A⑥ 歩合給に対して欠勤控除はできるか」と重複する部分もありますが、あらためて解説します。
1ヶ月間に働く所定の勤務日数や時間は決められていたとしても、歩合給は固定給と違い、満勤したらこの額を決まって支払う、というものではありません。
あくまで、売り上げに応じて支給額が決まります。(営収額×〇% など)
売り上げは、実際に出勤して働いた成果によるものです(運悪く、売り上げゼロという日はあるかもしれませんが)。
休んだら 当然、 売り上げ自体が下がりますので、それに応じて計算される歩合給の額も低くなります。この歩合給から“更に”欠勤控除をする、というのがそもそも理屈に合わない話なのです。 (いったい何を控除するの?)
では、休んだ日について有休を付与するとは?
歩合給の場合は、休まなかったらもう少し売り上げも増えたはずですので、その分の賃金をプラスして支給する、というのが有休を付与するということになります。
固定給プラス歩合給の場合
固定給、歩合給、それぞれの考え方をミックスした考え方になります。
欠勤控除できるのは、あくまで固定給部分のみです。歩合給部分については、前述の通り、欠勤控除はありません。
では、歩合給の場合など、有休の賃金はどう考えればいいのでしょうか。
次ページは、年次有給休暇の賃金について