3.最低賃金問題
最低賃金法第4条では次のように規定されています。
「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その賃金額以上の賃金を支払わなければならない」
すなわち、通常の労働時間(勤務割に組み込まれている時間外労働及び休日労働を含む)に応じて、少なくとも最低賃金以上の額が支払われていなければならない、ということなのです。

福岡県の最低賃金727円(平成26年10月5日発効)で冒頭の勤務モデルをオール歩合給で当てはめると、次のような金額となります。

727円×221時間+727円×0.25×33時間+727円×0.35×17時間+727円×0.25×78時間≒185,167円

歩率ごとに最賃割れとなる基準額は次のようになります。
taxi_chin10_261.で見たように、オール歩合給であっても、法律上は通常の賃金の6割程度の保障給を支払わなければなりません。そして、昨今のタクシー業界の状況を考えれば、多くの会社は、保障給を算定したところで、最低賃金を下回れば、最低賃金までで引き上げる措置をしなければならないことになり、現実には、次のように考えなければならないということです。
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結局、法律を守るためには、一定水準未満には最低賃金を満たす固定給を支払うという前提の、オール歩合給ということになってしまうのです。

これはつまり、固定給+歩合給と同じことなのです。最低賃金のチェックは、固定給、歩合給それぞれで算出したものを合算し行いますが、足切り以下であれば歩合給はゼロなので、固定給のみでチェックすることになるのは前述のとおりです。

冒頭の勤務モデルをあてはめると、福岡県の最低賃金を満たす固定給部分プラス固定給に対する割増賃金は、結局次のとおり。
727円×171時間+727円×1.25×33時間+727円×1.35×17時間+727円×0.25×78時間≒185,167円

結論として、オール歩合給、固定給+歩合給、いずれにしても、運賃収入を一定額以上あげることができなければ、最低賃金を下回ってしまい、会社は、その差額を最賃保障することを余儀なくされます。オール歩合給の保障給という概念も、結局はこの問題に行き着きます。
「最賃保障をすれば」・・・しかし、経営上、それを無制限に許すわけにはいかないからこそ「最賃問題」なのです。

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