Q5:労働基準法には、事業場外で業務に従事した場合、所定労働時間働いたものとみなす、といった「みなし労働」がありますが、これはタクシー乗務員には適用できないんですか?
A5:タクシー乗務員の場合、事業場外労働として、労働時間を「みなす」ことはできず、あくまで実労働時間に応じて労働時間を算定しなければなりません。
解説
労働基準法38条の2では「労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間働いたものとみなす。ただし、通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、(中略)当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす」とあり、一般に「事業場外みなし労働時間制」と呼ばれています。
外回りの営業職などにこの規定を適用しているケースが多いようですが、あくまで、「労働時間を算定し難いとき」というのが前提となります。
平成26年1月には、海外旅行の添乗員について事業場外みなし労働時間制の適用が否定された最高裁判決(阪急トラベルサポート事件)も出ており、単に事業場外労働だからといって、安易には適用できないことがあらためて確認されました。
さて、タクシー乗務員に対しては、この「事業場外みなし労働時間制」の適用は可能なのでしょうか?
会社の方からすれば、一旦車庫から出たら、どこを走ろうが、どこで休憩しようが、場合によっては帰庫する時間さえも本人まかせということも多く、だったら「みなし労働時間制」が適用できないのかと思う気持ちはわからないでもないです。
が、この件に関しては、労働時間の取扱いの根本的な話でもあるので、あらかじめ改善基準通達の中で、明確に記されています。
「自動車運転者の業務は事業場外において行われるものではあるが、通常は走行キロ数、運転日報等からも労働時間を算定し得るものであり、一般に法第38条の2の「労働時間を算定し難いとき」という要件には該当しないこと。」
(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準について 平成元.3.1基発第93号 いわゆる93号通達)
したがって、「みなす」ことはできず、あくまで実労働時間に応じて労働時間を算定しなければなりません。(この通達の文言に、あまり納得がいかない・・・という経営者の方も多いかもしれませんが・・・)