自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部改正について
平成9年3月11日基発第143号
改正 平成11年3月31日基発第168号
改正 平成13年1月6日基発第3号
改正 平成14年3月26日基発第0326010号
都道府県労働基準局長 殿
労働省労働基準局長
自動車運転者の労働時間等の労働条件については、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号(以下「改善基準告示」という。)、平成元年3月1日付け基発第92号「一般乗用旅客自動車運送事業以外の事業に従事する自動車運転者の拘束時間及び休息期間の特例について」(以下「特例通達」という。)、同日付け基発第93号「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準について」(以下「93号通達」という。)及び平成5年3月17日付け基発第165号「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部改正等について」「(以下「165号通達」という。))により、その改善を図ってきたところである。
本改善基準告示については、今般、平成8年12月6日の中央労働基準審議会の報告(別紙1。以下「平成8年報告」という。)を踏まえ、告示された「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部を改正する件」(平成9年労働省告示第4号。別紙2。以下「4号告示」という。)により別紙3のとおり改正されたところである。平成9年4月1日以後はこの改正後の改善基準告示によって自動車運転者の労働時間等の労働条件の改善を図ることとしたので、下記の事項に留意の上、その適切な運用を期されたい。
記
第1 4号告示による改善基準告示の改正の概要等
1 4号告示による改正の概要
4号告示による改正の概要は以下のとおりである。
(1) 一般乗用旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間について
イ 隔日勤務以外の勤務に就く一般乗用旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間について
(イ)1箇月についての拘束時間を短縮し、299時間を超えないものとした。
(ロ)車庫待ち等の自動車運転者に延長が認められる1箇月についての拘束時間を短縮し、322時間を超えないものとした。
ロ 隔日勤務に就く一般乗用旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間について
(イ)1箇月についての拘束時間を短縮し、262時間を超えないものとし、また、地域的事情その他の特別な事情がある場合において、労使協定があるときは、1年のうち6箇月までは270時間まで延長することができるものとした。
(ロ)車庫待ち等の自動車運転者の2暦日についての拘束時間に「1箇月について7回(地域的事情その他の特別の事情がある場合において労使協定があるときは8回)以内」で認められている延長について、「労使協定により定める回数(当該回数が1箇月について7回を超えるときは、7回)」に限り認めるものとした。
(ハ)車庫待ち等の自動車運転者の2暦日についての拘束時間を延長した場合の1箇月の拘束時間の上限を短縮し、上記(1)のロの(イ))の拘束時間に20時間を加えた時間を超えないものとした。
(2)貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間について
現行の2週間について143時間、4週間について273時間を超えないものとされているところを、1箇月について293時間を超えないものとし、また、労使協定があるときは、1年のうち6箇月までは、1年間についての拘束時間が3,516時間(293時間×12箇月)を超えない範囲内において、1箇月についての拘束時間を320時間まで延長することができるものとした。
(3)一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者に係る拘束時間等について
イ 準用規定をやめ、拘束時間、休息期間及び運転時間等について新たに規定するものとした。
ロ 拘束時間について、現行の2週間を平均し1週間当たり71.5時間を超えないものとされているところを、4週間を平均し1週間当たり65時間を超えないものとし、また、貸切バスを運行する営業所において運転の業務に従事する者、貸切バスに乗務する者及び特定運転者(高速バスの運転者)については、労使協定があるときは、52週間のうち16週間までは、4週間を平均し1週間当たり71.5時間まで延長することができるものとした。
ハ 運転時間について、現行の2週間を平均し1週間当たり44時間を超えないものとされているところを、4週間を平均し1週間当たり40時間を超えないものとし、また、貸切バスを運行する営業所において運転の業務に従事する者、貸切バスに乗務する者及び特定運転者(高速バスの運転者)については、労使協定があるときは、52週間についての運転時間が2,080時間(40時間×52週間)を超えない範囲内において、52週間のうち16週間までは4週間を平均し1週間当たり44時間まで延長することができるものとした。なお、4号告示による改正事項の新旧対照表を添付したので参考とされたい(別紙4)。
2 改善基準告示の遵守
今回の改正で労使協定により拘束時間及び運転時間を一定期間建長する措置が設けられたことから、これらの適正な管理が行われるよう従前以上に台帳の作成等による各種記録の整備を図る必要がある。
また、改善基準告示は、関係労使の代表の合意に基づき策定され、見直されたものであり、関係当事者は定められた基準を遵守することを特に強く要請されるものである。
第2 改善基準告示の内容
1 目的等(第1条関係)
(1)第1項は、長時間労働の実態が見られる自動車運転者について、労働時間等に関する改善のための基準を定めることにより、自動車運転者の労働時間等の労働条件の向上を図ることを目的とすることを明らかにしたものである。なお、4号告示により「労働省労働基準局長が定めるものを除く」こととしたが、これは平成8年報告記の2において「緊急輸送、緊急作業及び危険物輸送についての改善基準の適用除外の扱いについては、平成9年3月31日までに労使の合意に基づいて別途通達等で措置することが適当である。」とされたことを踏まえ、当該措置を行う際の改善基準告示上の根拠として規定したものである。
(2) 第2項は、労働関係の当事者に対して、この基準を理由として自動車運転者の労働条件を低下させてはならないことを求めるとともに、その向上に努めるべき旨を規定したものであるが、特に、改善基準告示の改正を契機に労働条件を低下させるようなことのないように要請されるものである。
2 一般乗用旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間等(第2条及び第3条関係)
第2条は、一般乗用旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間、休息期間等についての基準を定めたものである。
(1)隔日勤務以外の勤務に就く者の拘束時間及び休息期間(第2条第1項関係)
第1項は、一般乗用旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者のうち隔日勤務以外の勤務に就く者の拘束時間及び休息期間について定めたものである。
イ 拘束時間
拘束時間とは、基本的には労働時間と休息時間(仮眠時間を含む。)の合計時間をいうものであるが、改善基準告示においては拘束時間規制の観点から、あらゆる場合における始業時刻から終業時刻までの使用者に拘束されているすべての時間を確実に含ましめるため、念のため「その他の使用者に拘束されている時間」を加えたものである。したがって、通常の場合「その他の使用者に拘束されている時間」が発生する余地はなく、労働時間と休息時間(仮眠時間を含む。)の合計時間が拘束時間となるものである。 なお、改善基準告示に定める拘束時間の範囲内であっても、法定労働時間を超えて労働させ、又は休日に労働させる場合には労働基準法(以下「法」という。)第36条第1項に定める協定の締結・届出を要することはいうまでもない。
ロ 1箇月についての拘束時間
1箇月の拘束時間については、4号告示による改善基準告示の改正により改正がなされたが、その改正の内容は次のとおりである。
(イ)拘束時間については、4号告示による改正前は312時間以内とすることとしていたが、4号告示により、312時間から1日の原則的な拘束時間の上限に相当する13時間を減じ299時間とすることとしたものである。
299時間とは、13時間×23日という計算によるものであるが、当該月の労働日数には直接かかわらず、1箇月についての総拘束時間を299時間としたものである。
なお、「1箇月」とは原則として暦月をいうものであるが、就業規則、勤務割表等において特定日を起算日と定めている場合には、当該特定日から起算した1箇月でも差し支えないものである。
(ロ)顧客の需要に応ずるため常態として車庫等において待機する就労形態(以下「車庫待ち等」という。)の自動車運転者については、作業密度が比較的薄く、直ちに拘束時間の短縮を図ることが困難な事情も認められることから、4号告示による改正前は、改善基準告示虻より労使協定の締結を条件に1箇月について336時間(14時間×24日)までの拘束を認めることとしていたが、4号告示により、336時間から算定上の1日の拘束時間である14時間を減じ322時間(14時間×23日)以内とすることとしたものである。
「車庫待ち等の自動車運転者」とは、旧改善基準(93号通達により廃止された昭和54年12月27日付け基発第642号「自動車運転者の労働時間等の改善基準について」をいう。以下同じ。)における「常態として車庫待ち、駅待ち等の形態によって就労する自動車運転者」と同様である。したがって、一般的には今回改めて車庫待ち等の自動車運転者に該当するか否かを判断する必要はなく、また、従来車庫待ち等の実態にないものとされた事業場については、就労の実態に特段の変化がないかぎり、本項第1号括弧書の適用の余地はないものである。
本項第1号に定める労使協定には、少なくとも①協定の適用対象者、②1箇月についての拘束時間の限度、③協定の有効期間を定めるよう指導すること。
なお、別紙5のとおり協定例を作成したので、参考とすること。
ハ 1日についての拘束時間
(イ)1日(始業時刻から起算して24時間をいう。以下同じ。)についての拘束時間は、13時間以内を基本とするものであるが、必要がある場合には1日16時間まで拘束することができる。この場合においても1箇月についての拘束時間が本項第1号に定める拘束時間を超えない範囲内において認められるものであることはいうまでもない。
なお、1日についての拘束時間の限度(以下「最大拘束時間」という。)を16時間としたのは、始業時刻から起算して24時間中に少なくとも継続8時間以上の休息期間を確保する必要があるためである。
(ロ)車庫待ち等の自動車運転者については、一定の条件の下に最大拘束時間の延長を認めているが、これは、車庫待ち等の自動車運転者は比較的作業密度が薄く、かつ、営業区域が狭いこと等により、帰庫させ仮眠時間を与えることが可能な実態を有するためである。
この取扱は特例的なものであることから、改善基準第2条第1項第2号の要件については厳格に適用することとし、特に同号ハに定められた1日についての拘束時間が18時間を超える場合における仮眠時間に関しては、仮眠設備において夜間4時間以上の仮眠時間を確実に与えることが要請されていることに留意すること。
最大拘束時間を延長することができる条件はおおむね旧改善基準と同様であるが、1日の拘束時間が16時間を超えることのできる回数については、旧改善基準においては2週間を通じ3回を限度としていたものを、改善基準告示において拘束時間の規制の単位を1箇月としたことに伴い、1箇月について7回以内に改めたものである。
ニ 休息期間
休息期間については、拘束時間と表裏の関係にあることから、改善基準告示においては「使用者の拘束を受けない期間」としているが、休息期間についての考え方は、旧改善基準と全く同様である。すなわち、休息期間とは、勤務と次の勤務との間にあって、休息期間の直前の拘束時間における疲労の回復を図るとともに、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、その処分は労働者の全く自由な判断にゆだねられる時間であって、休憩時間や仮眠時間等とは本質的に異なる性格を有するものである。
(2)隔日勤務に就く者の拘束時間及び休息期間(第2条第2項関係)
隔日勤務制は都市部のタクシー業を中心に広く採用されている勤務形態であるので、2暦日における拘束時間を最大21時間(1日平均10.5時間)とし、日勤勤務より総拘束時間を短くするとともに、勤務終了後、継続20時間以上の休息期間を与えることを条件として、認めることとしている。
なお、日勤勤務と隔日勤務を併用して頻繁に勤務態様を変えることは、労働者の生理的機能への影響にかんがみ認められない。したがって、日勤勤務と隔日勤務を併用する場合には、制度的に一定期間ごとに交替させるよう勤務割を編成しなければならない。
イ 拘束時間
拘束時間拘束時間については、4号告示による改善基準告示の改正により改正がなされたが、その改正の内容は次のとおりである。
(イ)隔日勤務については、4号告示による改正前は1箇月について270時間以内とすることとされていたが、4号告示により、270時間から8時間を減じ262時間以内とすることとしたものである。この場合においても当該月の労働日数には直接かかわらず、1箇月における総拘束時間を262時間以内としたものである。
(ロ)地域的事情その他の特別な事情がある場合において、労使協定があるときは、1年のうち6箇月までは1箇月の拘束時間を270時間まで延長することができることとしたが、これは、一般乗用旅客自動車運送事業をめぐる諸情勢は非常に厳しいものがあり、かつ先行きが不透明な情勢にあること等にかんがみ、隔日勤務に就く者の1箇月の拘束時間の例外措置として認めることとしたものである。
「地域的事情その他の特別な事情」とは、例えば地方都市における顧客需要の状況、大都市部における顧客需要の一時的増加等をいうものである。
当該延長を労使協定に係らしめることとしたのは、拘束時間の限度について、予め労働者に周知することを通じて、適正かつ明確な拘束時間の管理を期すためであり、当該労使協定には次の事項を定めておく必要がある。
① 対象者
② 拘束時間を延長する月及び当該月の拘束時間
③ 当該協定の始期及び終期
また、協定に定めることとした事項は、事情の変更に応じて変更する必要が生じることも考えられるので、その変更により影響を受ける労働者がある程度余裕をもって対応できるよう、一定期間前もって協議することを明らかにする等、協定を変更するための手続きも併せて定めておく必要がある。
なお、別紙6のとおり協定例を作成したので、参考とすること。
労使協定では、1年の始期及び終期を定め、当該1年のうち6箇月までの範囲で1箇月の拘束時間を270時間を超えない範囲で延長する旨を協定することとなるが、その場合の各月の拘束時間は、例えば次のようになり、すべての協定対象者の各月の拘束時間は、この範囲内とする必要がある。
(ハ)車庫待ち等の自動車運転者については、夜間4時間以上の仮眠を与えることを条件に、1箇月について労使協定により定める回数(当該回数が1箇月について7回を超えるときは、7回)に限り、24時間まで延長することができることとし、この場合の1箇月の拘束時間は262時間又は270時間までで労使協定により定めた時間にそれぞれ20時間を加えた時間を超えないこととしたものである。
具体的には、1箇月の拘束時間を原則どおりとしている場合は車庫待ち等の自動車運転者の1箇月の拘束時間は282時間まで延長でき、労使協定により1箇月の拘束時間を270時間を超えない範囲で延長した場合には、当該延長を行った月については、当該延長により定められた拘束時間に20時間を加えた時間(例えば、ある月の1箇月の拘束時間を労使協定により266時間まで延長した場合には、車庫待ち等の自動車運転者のその月の拘束時間は266+20時間で286時間)まで延長できることとなる。
2暦日についての拘束時間の延長の限度は3時間であるから、21時間を超える回数が6回以内の場合には1箇月の拘束時間は262時間又は270時間までで労使協定により定めた時間にそれぞれ20時間を加えた時間に達することはなく、7回の場合には262時間又は270時間までで労使協定により定めた時間に20時間を加えた時間が限度となるものである。
1箇月についての拘束時間について通常の隔日勤務の場合より20時間の限度で延長を認めることとしたのは、2暦日についての拘束時間が21時間を超える場合には、拘束時間中少なくとも4時間の仮眠時間が含まれていることから、月間20時間の限度で延長を認めても通常の隔日勤務に比べて過重とはいえないという理由によるものである。
この取扱は特例的なものであることから、改善基準告示第2条第2項第1号の要件については厳格に適用することとし、特に2暦日についての拘束時間が21時間を超える場合における仮眠時間に関しては、仮眠設備において夜間4時間以上の仮眠時間を確実に与えることが要請されていることに留意すること。
なお、別紙7のとおり協定例を作成したので、参考とすること。
ロ 休息期間
勤務終了後、継続20時間以上の休息期間を与えなければならないこととしたのは、連続勤務を禁止する趣旨であるので、休息期間が確保されない連続勤務が行われないよう留意すること。
(3)時間外労働(第2条第3項関係)
第3項は、法第36条第1項の協定をする場合において1箇月以外の一定の期間について協定することを排除するものではないが、少なくとも1箇月について協定しなければならない。
なお、自動車運転者については「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年労働省告示第154号。以下「限度基準」という。)に定める限度時間の適用はないが、法第36条第1項に基づく協定における時間外労働については、改善基準告示に定める拘束時間の範囲内とする必要がある。
(4)休日労働(第2条第4項関係)
休日労働については、回数は2週間に1回を限度とし、1箇月についての拘束時間の限度内でのみ行わせることができる。休日労働の場合であっても、当該休日における勤務と前後の勤務との間には、それぞれ所定の休息期間が必要である。
隔日勤務の場合の休日労働は2日をまとめて行うものであるが、次のような形の休日労働も「2週間を通じ1回を限度とする」との基準に該当する休日労働である。
(5) ハイヤーに乗務する自動車運転者についての取扱
イ 拘束時間及び休息期間等の適用除外(第2条第5項関係)
ハイヤーの定義は、タクシー業務適正化臨時措置法(昭和45年法律第75号)第2条第2項の規定を参考としているものであるが、具体的には地方運輸局長からハイヤー運賃の認可を受けた自動車をいうものである。
ハイヤーに乗務する自動車運転者については、その勤務の実態から、前項までの拘束時間、休息期間等の規定を適用しないこととしている。
なお、勤務の都合上、勤務の終了時刻から次の勤務の始業時刻までの間隔が短くなる場合においても、当該運転者の疲労回復を図る観点から、継続4時間以上の睡眠時間を確保するため少なくとも6時間程度は次の勤務に就かせないようにすること。
ロ 時間外労働の目安時間(第3条関係)
時間外労働の目安時間については、一定期間について、勤務の実態を踏まえ、1箇月又は3箇月について協定するとともに、年間の労働時間の短縮を図る観点から1年間について協定を求めることとし、目安時間について、1箇月50時間、3箇月140時、1年間450時間としているものである。
その他の点については、限度基準第3条と同様の考え方によるものである。
3 貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間等(第4条関係)
第4条は、貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間、休息期間、運転時間等について定めたものである。
なお、旅客自動車運送事業及び貨物自動車運送事業以外の事業に従事する自動車運転者(主として人を運送することを目的とする自動車の運転の業務に従事する者を除く。)、例えば、販売業における配達部門の運転者については、本条によることとしている。
(1)拘束時間
拘束時間については、4号告示による改善基準告示の改正により改正がなされたが、その改正の内容は次のとおりである。
イ 4号告示により、2週間及び4週間の拘束時間に替えて1箇月の拘束時間を定めることとし、当該1箇月の拘束時間を293時間とすることとしたものである。
1箇月の総拘束時間の計算に当たっては、特定の日を起算日とし、1箇月ごとに区切って計算すること。 なお、拘束時間についての考え方は、2.の(1)のイのとおりである。
ロ 労使協定があるときは、1年のうち6箇月までは、1年間についての拘束時間が3,516時間を超えない範囲内において、1箇月についての拘束時間を320時間まで延長することができることとしたが、これは、輸送体系の変化、顧客ニーズの多様化等の貨物自動車運送事業の諸情勢を踏まえ、事業の繁忙・閑散等を考慮しつつ総労働時間短縮に取り組むための現段階の措置として認めることとしたものである。
当該延長を労使協定に係らしめることとしたのは、拘束時間の限度について、予め労働者に周知することを通じて、適正かつ明確な拘束時間の管理を期すためであり、当該労使協定には、次の事項を定めておく必要がある。
① 対象者
② 各月の拘束時間
③ 当該協定の始期及び終期
また、協定に定めることとした事項は、事情の変更に応じて変更する必要が生じることも考えられるので、その変更により影響を受ける労働者がある程度余裕をもって対応できるよう、一定期間前もって協議することを明らかにする等、協定を変更するための手続きも併せて定めておく必要がある。
当該労使協定では、293時間を超える月数は6箇月以内となるよう当該1年のすべての月の拘束時間を定め、すべての月の拘束時間は320時間以内で、その合計が3,516時間以内となっている必要がある。
なお、別紙8のとおり協定例を作成したので、参考とすること。
労使協定により定めた1年の各月の拘束時間の限度は、例えば次のようになり、すべての協定対象者の各月の拘束時間は、この範囲内とする必要がある。
(2)最大拘束時間
1日についての拘束時間の基本は13時間以内であるが、第1項第1号により1箇月を平均して計算する場合においても、最大拘束時間は16時間を限度とすることとしたものである。
最大拘束時間を16時間としたのは、始業時刻から起算して24時間中に少なくとも継続8時間以上の休息期間を確保する必要があるためである。「1日についての拘束時間が15時間を超える回数は、1週間について2回以内とする」とは、始業時刻から起算して24時間中に継続した休息期間を9時間未満とすることのできる日は1週間について2回を限度とするとの意である。
(3)休息期間
休息期間についての考え方は、2の(1)のニのとおりである。
(4)運転時間
運転時間については、4号告示において改正が行われなかったが、これは運輸体系の変化等の貨物自動車運送業における実態を考慮したことによるものである。
(5)最大運転時間
1日の運転時間の計算に当たっては、特定の日を起算日として2日ごとに区切り、その2日間の平均とすることが望ましいが、特定日の最大運転時間が改善基準に違反するか否かは、次によって判断すること。
①(A+B)/2>9かつ(A+C)/2>9の場合は、違反となる。
②(A+B)/2又は(A+C)/2のどちらか一方が9時間以内の場合は違反とならない。
2週間における総運転時間を計算する場合は、特定の日を起算日として2週間ごとに区切り、その2週間ごとに計算しなければならないものである。
(6)連続運転時間
「1回が連続10分以上で、かつ、合計が30分以上の運転の中断」には、1回連続30分以上の運転の中断も当然含まれる。
(7)拘束時間及び休息期間の特例(第3項関係)
業務の必要上、勤務の終了後継続8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合等についての特例を認めた特例通達の運用に当たっては、次の事項に留意すること。
なお、休息期間の分割の特例の適用に当たっては、当分の間認められた措置であることに留意し、特に、「業務の必要上」については、厳格に運用すること。
イ 業務の必要上、勤務の終了後継続8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合(特例通達記の1関係)
休息期間は、原則として始業時刻から起算して24時間中に継続8時間以上与えなければならないものであるが、貨物自動車運送事業等における実態からみると、8時間以上の継続した休息期間を付与することは困難な場合もあるので、業務の必要上やむを得ない場合であって、始業時刻から起算して24時間中に、1回当たり継続4時間以上、合計10時間以上の休息期間を与える場合には、休息期間の分割を認めることとしている。 この分割は必ずしも4時間、6時間、合計10時間というような2分割に限らず4時間、4時間、4時間、合計12時間というような3分割も認められるものである。
なお、休息期間を分割付与できる勤務は「一定期間における全勤務回数の2分の1」を限度としているが、休息期間の分割付与の状態が長期間継続することは好ましくないので、「一定期間」については、原則として2週間から4週間程度とし、業務の必要上やむを得ない場合であっても2箇月程度を限度とする。
ロ 自動車運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合(特例通達記の2関係)
「車内に身体を伸ばして休息することのできる設備」には、バスの場合、身体を伸ばして休息できるリクライニング方式の座席で、運転者のために専用の座席が少なくとも1座席以上確保されていれば、これに該当するものである。
ハ 自動車運転者がフェリーに乗船する場合(特例通達記の4関係)
勤務の中途においてフェリーに乗船した場合については、乗船中の2時間を拘束時間として取り扱い、それ以外の時間は休息期間として取り扱うこととしている。
フェリーの乗船時間が10時間(ただし、2人乗務の場合には6時間、隔日勤務の場合には22時間)を超え、8時間(2人乗務の場合には4時間、隔日勤務の場合には20時間)の休息期間が与えられた場合にはフェリー下船時刻から次の勤務が開始されたこととなる。この場合において、フェリー乗船中の2時間の拘束時間は、フェリー乗船前の勤務の拘束時間として取り扱うこと。
(8)時間外労働(第4項関係)
自動車運転者については限度基準に定める限度時間の適用はないが、法第36条第1項に基づく協定における時間外労働については、改善基準に定める拘束時間の範囲内とする必要がある。
(9)休日労働(第5項関係)
休日労働の場合であっても、当該休日における勤務と前後の勤務との間には、それぞれ所定の休息期間が必要である。
4 一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間等(第5条関係)
第5条は、一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者、いわゆるバス運転者の拘束時間、休息期間及び運転時間等について定めたものである。
なお、旅客自動車運送事業及び貨物自動車運送事業以外の事業に従事する自動車運転者であって、主として人を運送することを目的とする自動車の運転の業務に従事するもの、例えば、旅館の送迎用バスの運転者については、本条によることとした。
(1)第4条の準用規定をやめ、新たに一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間、休息期間及び運転時間等について定めることとした。
4号告示による改正前は、一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者、いわゆるバス運転者の拘束時間、休息期間及び運転時間等については、4号告示による改正前の告示第4条を準用していたが、4号告示においては、第4条の準用規定をやめ、新たに別条を設け、一般乗用旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者の拘束時間、休息期間及び運転時間等について定めることとしたものである。
(2) 拘束時間
拘束時間については、4号告示による改善基準告示の改正により改正がなされたが、その改正の内容は次のとおりである。
イ 4号告示による改正前は、2週間を平均し1週間当たり71.5時間を超えないものとしていたが、4号告示により、2週間の拘束時間に替えて4週間の拘束時間を定めることとし、4週間を平均し1週間当たり65時間を超えないものとした。「4週間を平均し1週間当たり65時間を超えない」とは、4号告示による改正前における考え方と同様に、総拘束時間は、できる限り各労働日又は各週の拘束時間を平準化することが望ましいとの意であり、65時間は13時間× 20日÷4という計算によるものである。
4週間における総拘束時間の計算に当たっては、特定の日を起算日とし、4週間ごとに区切って計算すること。 なお、拘束時間についての考え方は、2の(1)のイのとおりである。
ロ 貸切バスを運行する営業所において運転の業務に従事する者、貸切バスに乗務する者及び特定運転者(高速バスの運転者)については、労使協定があるときは、52週間のうち16週間までは、4週間を平均し1週間当たり71.5時間まで延長することができることとしたが、これは、バス事業をめぐる諸情勢は非常に厳しいものがあり、かつ、先行き不透明な情勢にあること等を踏まえつつ労働時間の箆締に取り組むための現段階の措置として認めることとしたものである。
当該延長の対象となる運転者の範囲は、貸切バスを運行する営業所において運転の業務に従事する者、貸切バスに乗務する者及び特定運転者であり、これらの運転者に範囲を限定した趣旨は、これら以外の者については、季節的繁忙等がなく、上記延長を認める必要がないためである。
当該延長を労使協定に係らしめることとしたのは、拘束時間の限度について、予め労働者に周知することを通じて、適正かつ明確な拘束時間の管理を期すためであり、当該労使協定においては、次の事項を定めておく必要がある。
① 対象者
② 拘束時間を延長する4週間及び当該4週間の拘束時間
③ 当該協定の始期及び終期
また、労使協定に定めることとした事項は、事情の変更に応じて変更する必要が生じることも考えられるので、その変更により影響を受ける労働者がある程度余裕をもって対応できるよう、一定期間前もって協議することを明らかにする等、協定を変更するための手続きも併せて定めておく必要がある。
なお、別紙9のとおり協定例を作成したので、参考とすること。
協定の対象となる期間の始期から4週間ごとに区切り(そのそれぞれの期間を以下「スパン」という。52週間のスパンの数は計13(52週間÷4週間=13)となる。)、当該13に区切られたスパンのうち4つのスパンについて、4週間を平均し1週間当たり71.5時間まで延長できることとなる(この4つのスパンは基本的には協定の対象となる始期から4週間ごとに区切った各スパンと一致するものである。)。当該延長されたスパンの総拘束時間の限度は286時間となるが、この場合においても、1週間当たり71.5時間となるようになるべく週ごとの拘束時間を平準化することが望ましいものである。
拘束時間の延長に関する協定について、その協定期間は、総拘束時間の定めに合わせ、拘束時間の延長も4週間ごととしたことから、52週間となることが基本である。
このため、年間総暦日数との関係で最初に締結した労使協定の始期と次の労使協定の始期とがずれてくることとなるが(例えば、平成9年4月1日を始期として労使協定を締結した場合は、次の労使協定の始期は平成10年3月31日、その次の労使協定の初日は平成11年3月30日となる。)、端数となる日数を調整の上、労使協定の始期を同一日に合わせる場合は、それによって1スパン未満の期間(以下「端数期間」という。)が生ずるが、当該端数期間の総拘束時間については按分比例によって清算し、(端数期間)÷28×260時間より大きくならないようにする必要がある。
労使協定により52週間のうち16週間まで、4週間を平均し1週間当たり71.5時間まで廷長した場合の各月の拘束時間の限度は、例えば次のようになり、すべての協定対象労働者の拘束時間は、この範囲内とする必要がある。
なお、各スパンと拘束時間を延長する4週間が一致しない場合も考えられるが、この場合の端数期間の総拘束時間についても、先に述べたと同様に按分比例によって清算し、(端数期間)÷28×260時間より大きくならないようにする必要がある。
(3)最大拘束時間
1日についての拘束時間の基本は13時間以内であるが、第1項第2号により4週間を平均して計算する場合においても、最大拘束時間は16時間を限度とすることとしたものである。
その他については、3.の(2)のとおりである。
(4)運転時間
運転時間については、4号告示による改善基準告示の改正により改正がなされたが、その改正の内容は次のとおりである。
イ 運転時間については、4号告示による改正前は、2日(始業時刻から起算して48時間をいう。)を平均し1日当たり9時間、2週間を平均し1週間当たり44時間としていたが、4号告示により、2週間の運転時間に替えて4週間の運転時間を定めることとし、4週間を平均し1週間当たり40時間を超えないものとした。
なお、今回の見直しによっても運転時間の観念そのものについては何ら変更が加えられるものではない。
ロ 貸切バスを運行する営業所において運転の業務に従事する者、貸切バスに乗務する者及び特定運転者(高速バスの運転者)については、労使協定があるときは、52週間についての運転時間が2,080時間を超えない範囲内において、52週間のうち16週間までは、4週間を平均し1週間当たり44時間まで延長することができることとした。その趣旨並びに運転時間を4週間を平均し1週間当たり44時間まで延長することができる運転者の範囲を限定した趣旨及び対象となる運転者の範囲は(2)のロと同様である。
当該延長を労使協定にかからしめることとしたのは、運転時間の限度について、予め労働者に周知することを通じて、適正かつ明確な運転時間の管理を期すためであり、当該労使協定においては、次の事項を定めておく必要がある。
① 対象者
② 運転時間を延長する4週間並びに当該4週間の運転時間
③ 当該協定の始期及び終期
また、労使協定に定めることとした事項は、事情の変更に応じて変更する必要が生じることも考えられるので、その変更により影響を受ける労働者がある程度余裕をもって対応できるよう、一定期間前もって協議することを明らかにする等、協定を変更するための手続きも併せて定めておく必要がある。
なお、別紙10のとおり協定例を作成したので、参考とすること。
労使協定では52週間の始期及び終期を定め、当該52週間のうち16週間までは、4週間を平均し1週間当たり44時間まで延長する旨協定することとなるが、その場合の各スパンの運転時間の限度は、例えば、下図のようになり、すべての協定対象者の各スパンの運転時間はこの範囲内とする必要がある。
また、すべての運転者について52週間を通じての運転時間は2,080時間に収まっていなければならないため、1週間当たりの運転時間が40時間を上回るスパンがあれば、当然40時間を下回るスパンもなければならないこととなる。
実際の個別の自動車運転者の運転時間の動きを例示したのが下図の折れ線である。運転手Aについては、第4、第5、第8スパンについて1週間当たり40時間を上回り、これら以外のスパンについて40時間を下回ることによって、年間を通しての総運転時間が2,080時間以内となっており、運転手Bについては、第4、第5、第7、第8スパンについて1週間当たり40時間を上回り、これら以外のスパンについて40時間を下回ることによって、年間を通しての総運転時間が2,080時間以内となっているものである。
このように1年間を通した運転時間の上限が定められたことから、従前にも増して運転時間についての記録を整備する等の適切な運転時間管理を行う必要がある。
(5)休息期間、最大運転時間、連続運転時間、時間外労働又は休日労働についての基準並びに拘束時間及び休息期間の特例については、3と同様である。
5 労働時間短縮堆進委員会の決議に関する取扱い
時間外及び休日の労働に係る労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法(平成4年法律第90号)第7条に規定する労働時間短縮堆進委員会の決議についても、法第36条第1項に基づく協定と同様に取り扱うこと。
6 モデル36協定
別紙11~13のとおりモデル36協定を作成したので、指導に当たって活用すること。
第3 重点対象
改善基準告示及び93号通達の記の第3に定める基準は、自動車運転者を使用する全事業場に適用されるものであり、運送を業とすると否とは問わないが、当面、次に掲げる事業を重点対象とすること。
1 道路運送法(昭和26年法律第183号)第2条に規定する旅客自動車運送事業及び貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)第2条に規定する貨物自動車運送事業のうち、次に掲げる事業
(1) 一般乗合旅客自動車運送事業
(2) 一般貸切旅客自動車運送事業
(3) 一般乗用旅客自動車運送事業
(4) 一般貨物自動車運送事業
(5) 特定貨物自動車運送事業
2 次に掲げる物品を運搬する貨物自動車を使用する事業
(1) 土砂・砂利
(2) 危険物
(3) 生コンクリート
(4) 木材、紙又はパルプ
(5) 鉄鋼材又は建設用鉄骨・鉄筋
(6) 鮮魚
(7) 農産物
3 常態として長距離貨物運送(「一の運行」の運転時間が9時間以上又は「一の運行」の走行距離が450キロメートル以上の貨物輸送をいう。)を行う貨物自動車を使用する事業
第4 通達の整理
本通達の適用をもって、特例通達の本文中、「及び平成4年労働省告示第99号」を「平成4年労働省告示第99号及び平成9年労働省告示第4号」に、「に該当する場合(第4条第6項又は第5条により準用する場合を含む。)」を「(第4条第6項により準用する場合を含む。)及び第5条第3項各号に該当する場合」に改め、記の2中「第4条第1項第2号前段」の次に「及び第5条第1項第2号前段」を、「第4条第1項第3号」の次に「及び第5条第1項第3号」を加え、記の3中「第3号」の次に「及び第5条第1項第1号から第3号」を加え、記の4の(2)中「第4条第1項第3号」の次に「及び第5条第1項第3号」を加えるとともに、93号通達中記の第2及び第5を削り、165号通達を廃止する