Q7:公休出勤の場合、割増賃金は3割5分以上支払わなくていいのですか?

A7:公休出勤であっても、必ずしも3割5分以上の割増が必要ということではなく、何が「法定休日労働」として3割5分以上の割増が必要となるか、整理する必要があります。

解説

まず、割増率の考え方について。
労働基準法上、3割5分以上の割増が必要となるのは、法定の休日(週1日もしくは4週4日の休日)に労働した場合です。

公休出勤であっても、法定休日労働にあたらなければ、(法定)時間外労働として2割5分以上の割増で済む場合もありますし、定時制の場合など、そもそも公休出勤しても週40時間以内の労働時間内であれば、割増すら発生しない場合もあります。

なお、2割5分以上の割増が必要な(法定)時間外労働は、原則1日8時間や週40時間を超えた労働が対象ですが、変形労働時間制を採用している場合は、少し面倒な考え方になります。(もっとも、変形労働時間制※であらかじめ組んでいる勤務の所定労働時間が、概ね週平均40時間であれば、所定を超えて働く分イコール法定時間外労働、すなわち2割5分以上の割増対象と考えて差し支えないでしょう。)
※変形労働時間制については、こちらの記事をご参照ください。
タクシー労務Q&A② 隔勤のような長時間の所定労働時間は違法?

次に、タクシー乗務員の「休日」は、改善基準上、休息期間に24時間を加算した連続した時間と定められています。
すなわち
・日勤勤務の場合 8時間+24時間=32時間
・隔日勤務の場合 20時間+24時間=44時間
自動車運転者の労働条件は厳しいので、これだけ休ませないと休日を与えたことにはならないですよ、ということです。

その一方で、この休日すべてが、公休出勤して労働した場合に3割5分以上の割増が必要な「法定休日」となるかといえば、そうではありません。
それでは、「法定休日」はどう考えるのでしょうか?

もし、休日の32時間や44時間の中に、暦日(午前0時~午後12時)24時間が含まれる場合は、その暦日を法定休日として位置づけます。つまり、この時間帯に労働があれば、法定休日労働として3割5分以上の割増の支払いを要します。それ以外の時間であれば、公休出勤でも、法定休日労働とはならないということになります。あとは、時間外労働として2割5分以上の割増対象となるかということだけです。

32時間や44時間の中に暦日24時間が含まれない場合は、次の2パターンで考えます。

① 休日(32時間や44時間)の中で、「法定休日」として取り扱う24時間の時間帯が就業規則等で特定されている。
② ①のように特定された24時間はない。

通常、①のように特定されているケースの方が少ないかと思います。そもそも労働基準法でも、法定休日を特定することはあくまで“望ましい”のであって、義務付けられているわけではありませんから。

①の場合、公休出勤で特定された24時間の時間帯に労働があれば、それは法定休日労働(3割5分以上の割増必要)となります。
一方、②の場合は、公休出勤があっても、それ以外で継続24時間が休日として確保されていれば法定休日労働はなく、確保されなかったら24時間に食い込んだ部分が法定休日労働となります

改善基準上の「休日」と、労働基準法上で3割5分以上の割増の支払いが必要となる「(法定)休日」がイコールではないため、3割5分の割増の扱いに関しては、以上のように考えなければなりません。

面倒だから、公休出勤は3割5分にしてしまえ、というのが楽でしょうが、経営上はそうもいかないかもしれません。逆に、3割5分支払うべきところを2割5分で済ましていれば、それは割増賃金不足というリスクになります。

なお、4週4日の場合で、法定休日が2日連続の場合は、上記の継続24時間を48時間と読み替えることになります。(実際はレアケースでしょうが)

以上、行政通達「法定休日における割増賃金の考え方について」(平成6年5月31日基発331号)をベースに解説しました。