5.おわりに
時間を短縮して、効率的・効果的に運賃収入を上げることができる会社、それが理想的なタクシー事業者です。
それができれば苦労しない、という声が聞こえてきそうですが、確かに、先に紹介した会社も、それぞれの会社が、経営理念の徹底と社員教育、独自の顧客サービスの追及などを何年もかけて取り組んで、ようやく実を結んでいるように、いずれも一朝一夕にできるものではないでしょう。
私が実際にお会いしてお話を聞いた会社でも、勤務シフトや、営業方法、様々な独自の工夫で経営を安定させている経営者の方は、ずいぶん昔からそれに取り組んでいるという方でしたし、決して最初からうまくいったわけではないということでした。
1つだけ例を挙げるなら、意外と共通していたのは、「営業回数を重視する」というものでした。ワンメーターでも、コツコツと積み上げるための工夫をする。それが不況にも強いし、時に長距離を呼び込んだりもする。
また、乗務員自身が、自分なりの「営業目標(数字)」を設定することも大事なようです。これは、文献③、④の両者とも推奨していますし、タクシーに限らず、私自身や、他の仕事でも大いに参考になることです。
会社が決めるのではなく、各人が、自分なりの「営業目標」を設定することにより、漫然と走るのではなく、工夫が生まれてくる。
労働法上は、改善基準の範囲内の時間で、少なくとも最低賃金と割増賃金が支払われていれば法律違反とはならないのでしょうが、それでは業界の問題は改善されないのです。
単に最低賃金が保障されていればいいという、『最小不幸社会』ではなく、運収を伸ばし、給料が増え、会社も乗務員もハッピーになれる『最大幸福社会』を目指して、少しずつでも改革を実践していく。タクシー業界を取り巻く状況は、今後も厳しいものが続くでしょう。だからこそ、会社の規模にかかわらず「一歩抜け出る」ために、頑張ってほしいと思います。