タクシー会社が労働基準監督署から法違反を指摘されやすい労働基準法のポイントについて説明します。

①労働条件の明示(労働基準法第15条)

乗務員を採用するときは、労働基準法で定められた項目について、書面で労働条件を明示することが義務付けられています。様式自体は自由なのですが、定められた項目が網羅されている必要があります。

定められた項目とは?

労働契約の期間/就業の場所、従事する業務内容/始業終業時刻、残業の有無、休日、休暇など/賃金の決定・計算・支払方法・締切り・支払日/退職に関する事項(解雇の事由を含む)

最低限、これらについては書面による明示が必要です。せっかく書面を作成していても、これらの一部が抜けているものをよく見かけるので要注意です!

なお、法律上は「書面による明示」だけであって、双方が署名捺印などする「契約書」の形態までは求めていません。が、あとで「もらっていない」などと言われてトラブルにならないよう、適正な労務管理という観点では「雇用契約書」の形が望ましいでしょう。

②法定労働時間(労働基準法第32条)

タクシー乗務員なら、日勤勤務で1日16時間、隔日勤務で1日21時間、そんな数字が浮かぶかもしれません。
が、ちょっと待ってください。それは「拘束時間」のお話で、労働基準法では、「法定労働時間」が定められており、1日8時間1週40時間を超えて働かせてはならないし、所定労働時間(会社が独自に決める労働時間)も、この法定労働時間の範囲内でなければならないとされています。
この例外は2つ。

一つ目は、「変形労働時間制」を採用して、一定の期間を平均して週40時間に収まるようにすれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて所定労働時間を決めることができる、というもの。

二つ目は、「時間外労働・休日労働に関する協定」(俗に36協定といいます)を労使間で締結して、あらかじめ所轄の労働基準監督署に届出をしておくというもの。

なお、法定労働時間は、もともとは週48時間だったのが、昭和63年改正で週46時間、平成6年から運輸交通業については特例で44時間を経て、平成9年からは週40時間労働制となっています。

③変形労働時間制(労働基準法第32条の2、32条の4)

隔日勤務であれば、タクシー乗務のほとんどがこの変形労働時間制を採用していると言っても過言ではないでしょう。
変形労働時間制には、1か月単位の変形労働時間制と、1年単位の変形労働時間制などがありますが、1か月単位の変形労働時間制を採用しているケースがほとんどです。
1か月単位の変形労働時間制のポイントは以下の通り。
・1か月以内の期間を平均して週40時間以下になるように交番表を組むこと
・就業規則に変形労働時間制について規定しておくこと
変形労働時間制については、こちらで詳しく解説しています。

④休憩時間(労働基準法第34条)

休憩時間は、労働から解放され、自由に利用できる時間と定義されます。
労働時間が6時間を超えるときは45分以上、労働時間が8時間を超えるときは1時間以上の休憩時間を、労働時間の途中にあたえることになっています。
なお、行政通達では、あえて『単に作業に従事しないいわゆる手待ち時間は含まず、労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間をいう』(昭22.9.13 発基第17号)といっています。
また、休憩時間もいくら長くても構わないということではなく、改善基準上では一定の制約が設けられています。詳しくはこちら

⑤休日(労働基準法第35条)

休日(労働義務がない日)は、毎週少なくとも1日、または4週間で4日以上は与えなければなりません。これを「法定休日」と言います。

⑥時間外及び休日の労働(労働基準法第36条)

会社が法定労働時間外や法定休日に労働させる場合には、あらかじめ労使間で「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結して、所定の様式で労働基準監督署に届け出をしておかなければなりません。労働基準法36条に基づく協定なので、俗に「36(サブロク)協定」と呼ばれています。
36協定については、こちらで詳しく解説しています。
また、書式のダウンロードはこちら

2019年4月以降の「時間外労働の上限規制」については、こちらを参照してください。

⑦時間外、休日及び深夜の割増賃金(労働基準法第37条)

会社が法定労働時間外や深夜(夜10時~翌朝5時)に働かせる場合は2割5分以上(ただし法定時間外残業が1箇月に60時間を超えた場合は5割以上)、法定休日に労働させた場合には3割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。

⑧年次有給休暇(労働基準法第39条)

雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全所定労働日の8割以上出勤した労働者に対して、10日の年次有給休暇を与えなければなりません。付与日数は、以後、1年毎に勤務年数に応じて増えていき、6年6か月で最大20日となります。

※出勤率の計算では、次の期間は出勤したものとして取り扱います。
●労働災害による休業期間   ●育児休業・介護休業の期間
●産前産後の休業期間     ●有給休暇を取得した期間

この付与日数は、週所定労働時間や週所定労働日数が少ない方については下表のようになります。


定時制やアルバイト、いわゆる非正規だから有休がない、ということにはなりません。あくまで、基準日(有休が付与される日)における週所定労働時間・週所定労働日数によって付与日数が決まります。
なお、60歳定年で、以後定時制として再雇用された場合でも、勤続年数はそのまま引き継がれるので注意が必要です。
年次有給休暇の考え方については、こちらにも詳しい説明を掲載しています・