福岡の社会保険労務士渡辺事務所 改善基準について解説&考察します

賃金についての考察③

2.固定給+歩合給について
「固定給+歩合給」の給与体系(A型賃金のようなもの)で考えたらどうでしょうか?
一般的に、賃金額は次の式であらわされます。

賃金額=固定給+(月間営収額-足切額)×歩合率

賞与、一時金などをあらかじめ含む、含まないはさておき、ここでは固定給として基本給、皆勤手当、無事故手当を設定し、歩合給としては、足切り40万円、歩合率45%としたケースで考えてみます。
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経営側にとってのメリット(と言えるかはともかく・・・)としては、固定給の場合、欠勤したときや事故があったときに、手当を不支給とすることができるということです。

さらに、基本給についても、ノーワークノーペイの原則に従い、欠勤控除が可能となります。  また、前述の労働基準法第27条の保障給に関しては、「固定給の部分が賃金総額の大半(概ね6割程度以上)を占めている場合には、請負制で使用する場合に該当しない」との通達がでており、すなわち、固定給部分が全体の6割以上であれば保障給については考慮しなくていいということになります。

実際には、多くの会社が、固定給+歩合給の給与体系をとっているのではないでしょうか。

さて、仮に1乗務欠勤した場合、上記の表は次のように修正されます。
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なお、歩合給には欠勤控除という概念はないのですが、総労働時間が221時間から206.75時間、時間外労働、深夜労働がそれぞれ33→30.25時間、78→72時間となったことにより、割増賃金額が変わっています。
ここで、もう一度、数式を見てみましょう。

賃金額=固定給+(月間営収額-足切額)×歩合率

仮に月間営収額=足切額、すなわち足切り以下であった場合、賃金額は固定給のみとなります。しかし、このケースでは残念ながら、単に固定給を支払えばいいというわけにはいきません。
次の表を見てみましょう。
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固定給とその割増賃金の合計で178,292円。一見問題なさそうですが、最低賃金額についてチェックすると次のようになり、福岡県の地域別最低賃金(平成26年10月5日発効)においては、違反となります。
固定給分 115,000÷171時間=673円 歩合給分 0円 計673円<727円(福岡県最低賃金)
※皆勤手当は最低賃金の対象から除かれます

最低賃金をクリアするためには、逆算すると 固定給:727円×171時間=124,317円、固定給に対する割増賃金:727円×1.25×33時間+727円×1.35×17時間+727円×0.25×78時間=60,850円 合計:185,167円なので、欠勤しない限りは、結局、月額約12.4万円の固定給は支給しなければならないということになります。

しかも、このモデルでは、基本給、無事故手当、皆勤手当を合わせて12万円なので、これでようやく最賃並み(実際は、多少不足している)。足切り以下であれば、各手当の支給要件を満たす満たさないに関わらず、基本部分として12万円程度は支給しなければならないという、制度上の欠陥まで出てしまいます。つまり、足切り超と足切り以下については、別の要件を設定する必要まで生じます。

こうしてみると、固定給を、基本給と時間外手当の算定基礎とならない手当(皆勤手当や家族手当、住宅手当、通勤手当など)に分けることは、例えば賞与や退職金を考える上での基本給ベースを低くしたり、時間外手当の額を抑制するという意味では一定の効果がありますが、それもあくまで、運収が足切り超であることや、足切り以下であっても基本部分が最低賃金以上という前提になります。

なお、足切り以下はオール歩合という会社も現実にはあるようですが、1.で見たように、労働法上はあってはならない、ということです。

結局、固定給+歩合給であっても、行き着くところは最低賃金問題ということになってしまうのです。

つづき タクシー乗務員の賃金についての考察④

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