ざっくりとした背景

①昭和41年以前、自動車運転者に対しては、他の業種と同様に労働基準法で労働時間等の規制や監督指導が行われていました。

②自動車運転者の労働条件改善のため、昭和42年、「自動車運転者の労働時間等の改善基準」(昭和42年2月9日 基発第139号)という行政通達(いわゆる「2・9通達」)が出されました。
しかしこの通達、「実作業時間」規制が中心で、客待ち時間などの労働時間を多く含む自動車運転者については、あまり効果が上がらなかった・・・らしい。

③そこで昭和54年、「自動車運転者の労働時間等の改善基準について」(昭和54年12月27日 基発第642号)という行政通達(いわゆる「27通達」)が出されました。ここで、「拘束時間」による規制に方向転換されます。

④昭和62年、「自動車運転者労働時間問題小委員会」が設置されました。以後、この委員会で自動車運転者の労働時間等の規制に関する問題について検討されることになります。

⑤上記の小委員会の検討報告に基づいて、平成元年、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)が大臣告示されました。これが、現在の改善基準です。

⑥改善基準は、以後も小委員会の報告を経て、平成3年、平成4年、平成9年、平成11年、平成12年に一部改正が行われています。
なかでも平成9年改正(労働省告示第4号)は結構大きな改正で、拘束時間などの基準が現在の数字に見直されました。

⑦なお、⑤、⑥の告示を実際に運用するために行政通達がいくつか出されています。
覚えておきたいのは、以下の通達です。

  • 「一般乗用旅客自動車運送事業以外の事業に従事する自動車運転者の拘束時間及び休息期間の特例について」平成元年3月1日付け基発92号(「特例通達」と呼ばれる)
  • 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準について」平成元年3月1日付け基発93号(「93号通達」と呼ばれる)
  • 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部改正等について」平成9年3月11日付け基発143号(「143号通達」と呼ばれる)

改善基準告示の主な内容

日勤勤務

拘束時間1箇月 299時間
1日 原則 13時間
最大 16時間
特例1箇月の拘束時間の特例
「車庫待ち等」で、かつ、労使協定があれば、1箇月322時間まで延長可
1日の最大拘束時間の特例
「車庫待ち等」で、かつ次の条件を満たせば24時間まで延長可
・休息期間が継続20時間以上
・16時間超えは1箇月7回以内
・18時間超えの場合、夜間に4時間以上の仮眠付与
休息期間継続 8時間以上
時間外
労働
時間外労働協定における一定期間は1箇月を協定
休日労働2週間に1回以内、かつ、1箇月の拘束時間及び最大拘束時間の範囲内

隔日勤務

拘束時間1箇月 262時間 (地域的事情その他の特別な事情がある場合において、労使協定があるときは、1年のうち6箇月までは270時間まで延長可)
2暦日 21時間
特例「車庫待ち等」で次の条件を満たせば
2暦日 24時間
1箇月 拘束時間に20時間を加えた時間まで延長可
・夜間4時間以上の仮眠付与
・21時間超えは労使協定により1箇月7回以内
休息期間継続 20時間以上
時間外
労働
時間外労働協定における一定期間は1箇月を協定
休日労働2週間に1回以内、かつ、1箇月の拘束時間及び最大拘束時間の範囲内

※ハイヤーについては省略します。

用語の定義

拘束時間
労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む)の合計。
なお、『手待時間が労働時間に含まれることはいうまでもない』(93号通達)とされていますので、客待ちは労働時間として扱います。

休息期間
使用者の拘束を受けない時間。つまり、疲労回復、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、労働者が自由に使える時間。

休憩時間
基本的な考え方は労働基準法第34条のとおり。なお、タクシーの場合、『事業場外での仮眠時間を除く休憩時間は3時間を超えてはならない』(93号通達)とされています。

休日
休息期間に24時間を加えた、労働義務のない時間。
つまり、日勤勤務であれば32時間、隔日勤務であれば44時間確保されていることが必要です。

車庫待ち等
主に車庫待ち、駅待ち等によって営業しており、作業密度が比較的薄く、かつ営業区域も比較的狭く、休憩時間も原則として事業場内での休憩が確保されている、などの実態にあるものをいいます。一般的には、人口30万人程度以上の都市であれば、「車庫待ち等」ではないとされていますが、実態に照らして判断されることになります。