(累進歩合制度について考える①)

1.累進歩合制度廃止の根拠

タクシー乗務員の賃金制度において、「累進歩合制度」が廃止されなければならないというのは、すでに皆さんご存知のことだと思います。
その根拠は、93号通達自動車運転者の労働時間等の改善のための基準について(平元.3.1基発第93号))にさかのぼります。

該当部分を抜粋すると、
『労働時間等の取扱い及び賃金制度等に関する基準』として
『(2)賃金制度等 自動車運転者の貸金制度等は、次により改善を図るものとすること。』
この中で、
『ロ 累進歩合制度 歩合給制度のうち累進歩合制度は廃止するものとすること。』
とあります。
更に、
『(2)賃金制度等に関する留意事項』」として
『賃金制度は、本来、労使が自主的に決定すべきものであるが、上記1の(2)のロでは、歩合給制度のうち累進歩合制度を特に廃止すべきこととしたこと。
累進歩合制度には、水揚高、運搬量等に応じて歩合給が定められている場合にその歩合給の額が非連続的に増減するいわゆる「累進歩合給」、水揚高等の最も高い者又はごく一部の労働者しか達成し得ない高い水場高等を達成した者のみに支給するいわゆる「トップ賞」、水揚高等を数段階に区分し、その水揚高の区分の額に達するごとに一定額の加算を行ういわゆる「奨励加給」が該当するものであること。』

と、これが根拠となるわけです。

つまり、単に「累進歩合給」だけでなく、累進歩合的性格を持つ制度も廃止すべきこととしているわけです。

しかし、実際にいろいろな現場で見聞きすると、この累進歩合制度の廃止について、どの程度の行政指導がなされているのか、更に、運収そのものが低迷している現在、廃止されるべき本来の累進歩合制度がどの程度のものなのか、疑問に感じることがありました。

その一方で、93号通達から26年が経過し、先ごろ、新たに通達が出されたのは記憶に新しいところです。
「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律の附帯決議を踏まえた累進歩合制度の廃止に係る指導等の徹底について」(平成26年1月24日基発0124第1号)

もう、名称のとおりなんですが・・・。

この中で改めて、
『累進歩合制度については、長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあり、交通事故の発生も懸念されることから、平成元年3月1日付け基発第93号「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準について」により廃止すべきこととし、その遵守について指導してきたところであるが、同法の施行に伴い、今後は、下記によりその更なる徹底を図ることとしたので、その実施に遺憾なきを期されたい』
とのこと。

やはり、累進歩合給制度の廃止については、指導は強化される方向にあるのでしょうか。

ここでは、累進歩合制度とはどういうものか、また、廃止するのであれば、(累進ではない)積算歩合給制などに移行するにはどう考えればいいか、あらためて考察していきたいと思います。

つづく 累進歩合制度について考える②